修善寺温泉街の新たな文化発信拠点
修善寺温泉街の中心部、修禅寺に向かう道の途中に佇む「燕舎(つばめしゃ)GIFT SHOP&DESIGN STUDIO」は、デザインの力による地域活性化を目指す革新的なギフトショップ兼デザインスタジオです。2017年に日枝神社横にオープンしたこの小さな店舗は、単なる土産物店の枠を超えて、修善寺の文化と未来を創造する重要な拠点として機能しています。店名には「ツバメは毎年同じ場所に戻り巣をつくる」という習性から、観光で訪れた方や地元を離れた方が再び修善寺へと足を運んでもらえるきっかけとなるような場所になりたいという深い想いが込められています。
燕舎の最大の特徴は、オリジナルデザインのお土産物開発から地域イベントの企画運営まで、多岐にわたる活動を通じて「好循環型の地域活性化」を実現していることです。店主である勝野さんは、大学時代の修善寺の旅館組合との協働プロジェクト「恋の橋巡り」への参加をきっかけに地域との繋がりを深め、2017年の大学4年次に就職活動を中断してまで燕舎を立ち上げました。消滅可能性都市に分類される伊豆市の現状に危機感を抱き、「この地域を消滅させたくない」という強い想いから、地域密着型のデザインスタジオとして活動を開始しています。
店内には、燕舎オリジナルデザインの商品をはじめ、伊豆在住の作家さんの作品やセレクト雑貨が「ちょっと素敵な修善寺のお土産」として丁寧にセレクトされています。特に注目すべきは、修善寺と深い縁を持つ大正ロマンの画家・竹久夢二の作品をモチーフにした商品群です。夢二が1917年に最愛の恋人・彦乃との逢瀬のために修善寺温泉を訪れた歴史的事実を掘り起こし、現在も営業している旅館「菊屋」(湯回廊 菊屋)での滞在エピソードと共に、夢二グッズを修善寺の新たな文化的価値として発信しています。
燕舎の代表的なオリジナル商品である「だるまっ子」は、達磨山の麓に位置する修善寺温泉の地域性を活かした秀逸な商品です。地域の子どもたちが「だるまっ子」と呼ばれて育つ文化的背景から着想を得て、「だるまっ子プロジェクト」として展開されています。木地は伊豆在住の木工作家「ありしろ道具店」の有城さん、絵付けはイラストレーター「tofukuro」の沢田たえさんが手がけ、すべて手作業で作られる温かみのある表情が特徴です。伊豆の間伐材を活用することで森林保護にも貢献する、サステナブルな地域活性化の象徴的存在となっています。
「ほんものの温泉水入り」入浴剤も燕舎の人気商品の一つです。伊豆最古の温泉である独鈷の湯が描かれた昔懐かしいパッケージデザインを燕舎が手がけ、ヒノキの香りと竹林の小径をイメージした柔らかな緑の色合いで癒しのバスタイムを提供しています。また、修善寺で栽培された梅を氷砂糖でじっくり漬け込んだ濃厚な梅シロップなど、地場産品を活用した商品開発も積極的に行っています。
燕舎の活動は店舗運営にとどまらず、地域全体の文化創造にも及んでいます。2024年3月には修善寺温泉・地域住民発のローカル文芸マガジンを創刊し、様々な文芸作品を通じて季節や時代を超えて修善寺温泉を楽しめるコンテンツを発信しています。また、20年以上シャッターが降りていた元八百屋「やおくに」をリノベーションし、地域に開けたレンタルスペース・ラウンジとして2019年から運営するなど、空き店舗の活用による街の活性化にも取り組んでいます。
営業時間は11:00から16:30まで、定休日は月曜日・木曜日(時々不定休)となっています。修善寺温泉場バスターミナルから修禅寺に向かう途中という絶好の立地にあるため、観光客の方々が気軽に立ち寄ることができます。店舗では燕舎オリジナル商品だけでなく、文香や一筆箋などの和雑貨、レトロモダンなデザインのストールやハンカチなど、修善寺温泉の雰囲気に合う商品を幅広く取り扱っています。
燕舎のデザインスタジオとしての実績も注目に値します。2019年には静岡県主催「地域のお店」デザイン表彰で特別受賞、さんしん夢企業大賞創業部門最優勝を受賞し、TEDxHamamatsuでの登壇も果たしています。星野リゾート リゾナーレ熱海の「はじめてのおんせん」プランの各種ツール制作など、県内外の企業からのデザイン依頼も多数手がけており、修善寺を拠点とするデザインスタジオとしての地位を確立しています。
燕舎では、観光客や地域の方々に末永く愛されるお土産品の商品開発やリニューアルの相談も受け付けており、企画からデザイン制作、受託販売まで一貫したサポートを提供しています。静岡県内の企業や団体、個人とのパートナーシップも積極的に募集し、地域を超えた連携による新たな価値創造に取り組んでいます。オンラインストアも運営しており、修善寺を訪れることができない方々にも燕舎の商品を届けています。
燕舎の取り組みは、単なるビジネスを超えた地域愛に基づく文化創造活動として、多くの注目を集めています。地域住民の「愛着・愛情・誇り」という気持ちを大切にし、住民による自主的な地域活動を促進することで、持続可能な地域活性化モデルを構築しています。青空手づくり市「だるまっ子市」の発足など、新たなコミュニティイベントの創出も積極的に行い、修善寺温泉街に新たな文化的価値と活気をもたらしています。
修善寺を訪れた際には、ぜひ燕舎に足を運んで、デザインの力で紡がれる地域の物語と未来への想いに触れてみてください。ここでしか出会えないオリジナル商品や地域作家の作品は、修善寺での思い出をより特別なものにしてくれることでしょう。燕舎は、古き良き温泉街の伝統を守りながらも、新しい文化を創造し続ける修善寺の希望の象徴として、これからも多くの人々に愛され続けていくに違いありません。
マップ
このスポットの近くの飲食店
このスポットの近くでできること(観光)
このスポットの近くでできること(体験)
このスポットの近くにある宿泊施設
この地域のおすすめ土産
このスポットの近くの日帰り温泉